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遺産分割調停は自分1人でできますか
調停は自力でも可能
遺産分割協議では、相続人の意見が対立してなかなか合意できないことがあります。その場合は、家庭裁判所での調停が選択肢になってきます。しかし、裁判所に申立てるのは、心理的なハードルが高く、弁護士に依頼すると数十万円以上の費用がかかるため、二の足を踏む方も少なくありません。
しかし、調停を家庭裁判所に申立てる手続きは、それほど複雑ではなく、調停の進め方もわかりやすく、学校や仕事で法律に接したことのない人でも、1人で対応することは可能です。
簡単・安い・安心
全国の調停委員で組織する日本調停協会連合会は、遺産分割調停など家事調停について、「簡単」「安い」「安心」とPRしています。
家庭裁判所のサポートもあります。無料の「家事手続案内」では、対面で、申立て手続きや書類の書き方について説明してくれます。1回20~30分以内、予約不要なところが多いようです。自力での調停を考えておられる方はぜひ、利用しましょう。
弁護士の関与なし調停成立949件
令和5年の司法統計を見ると、全国で調停が成立した遺産分割事件6,125件のうち、弁護士が関与していたのが5,176件(84.5%)、関与していなかったのが949件(15.5%)です。弁護士に依頼する方は多いとはいえ、15.5%の人は弁護士に依頼せず調停成立まで持ち込んでいるわけです。自力でできないわけではありません。
申立てに相続人の同意は不要
他の相続人が話し合いに応じないとき、無理難題を言ってくるときは、1人で悩まず、家庭裁判所に調停を申立てましょう。調停を申し立てることについて、他の相続人の同意は必要ありません。
第三者が入る意義は大きい
自分たちだけで話し合い、感情的な対立を深めるより、早めに第三者に入ってもらって、客観的な立場からアドバイスを受けるのが得策です。親戚から言われて、頭に血がのぼる人でも、調停委員の口から聞くと、冷静に受け入れることができたりします。
裁判所に行くという行為自体が、もめごと解消への動機づけになるという面もあります。厳かな場では、身勝手な主張にブレーキがかかるでしょう。呼び出しを無視することもできません。正当な理由なく調停に出ないときは5万円以下の過料の対象になります。
収入印紙1200円
申立て自体にかかる費用も1,200円の収入印紙と連絡用の郵便切手代だけです。お金の心配をせずに貴重な公的サービスが受けられます。
誰を相手にどこに申立てるの?
調停の相手方は、申立人になっていない相続人全員です。
相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てます。例えば、京都府福知山市の相続人を相手に、奈良県橿原市の相続人が申立てる場合は、申立先は京都家庭裁判所福知山支部です。逆の場合は、奈良家庭裁判所葛城支部です。
相手方が複数いるときは、その中の1人の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てます。相続人全員が合意すれば、特定の裁判所を選ぶことができます。
遺産分割調停の申立てに必要な書類は、次のようなものです。書類の書き方については、「家事手続案内」で教えてもらえますし、裁判所のウェブサイトでも記載例を公開しています。参考にすれば、記入はそれほど難しくありません。戸籍や財産関係の添付書類も、相続手続きをするためには当然、必要になってくるものです。
遺産分割調停の申立て必要書類
- 申立書
- 当事者目録
- 遺産目録
- 事情説明書
- 被相続人の出生時から死亡時までの連続する戸籍、住民票除票
- 相続人全員の戸籍謄本、住民票
- 不動産登記事項証明書、固定資産税評価証明書
- 遺産に属する物または権利に関する資料
- 通帳の写し、残高証明書、相続税申告書など
関連条文
家事事件手続法
▽家事事件手続法第245条
家事調停事件は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所又は当事者が合意で定める家庭裁判所の管轄に属する。