権利証がなくなりました。困ることはありますか

権利証は所有権証ではありません

昔から「火事になったら権利証をもって逃げる」なんて言われています。しかし、権利証(登記済証)は「命の次」ほど大事なものなのでしょうか。権利証は「本人確認手段」のひとつにすぎません。名前からイメージする「不動産の所有権証」ではないのです。紛失しても所有権を失うことはありません。ですから、大事なものではありますが、「命の次」は言い過ぎです。

権利証って何?

登記済証に押されるハンコ

登記済証の印判見本

登記しているから所有権を主張できる

第三者に不動産の所有権を主張するためには、登記していなくてはなりません。権利証は登記後に交付されますので、権利証があったということは、その不動産が登記されているということです。したがって、登記名義人は明確です。

権利証だけでは登記できない

登記手続きに特化された本人確認手段である権利証は、不動産の権利を移したり、抵当権を設定したりするときに利用されますが、権利証だけでは登記はできませんし、権利証がないからといって登記ができないわけではありません。あくまでも補助的なものです。

売買で所有権が変わる時は、売買契約書(または登記原因証明情報)や売主の実印、印鑑証明書などが必要です。贈与で所有権が移るときは、贈与契約書(同)や贈与する人の実印、印鑑証明書などが必要です。仮に権利証を持ち去った人がいたとしても、実印をしっかり保管していれば心配ないわけです。

相続登記する際は、基本的に権利証は不要です。必要なのは、遺言書で相続人以外に遺贈する場合くらいです。

権利証をなくした時はどう登記?

権利証がないときの代わりの手段としては、①事前通知制度②司法書士による本人確認③公証人の認証制度――があります。なお、権利証は紛失すると、再発行されません。

①事前通知制度

権利証を提出できない理由を書いて申請書を提出すると、登記官は本人限定受取郵便で、登記名義人に申請があったこと、申請が真実であるときは2週間以内申し出るよう通知します。申し出があれば登記されます。

②司法書士による本人確認

本人と面談した司法書士が、運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなどによって確認し、「本人確認情報」を作成して法務局に提出します。もっともポピュラーな方法です。

③公証人による認証

本人が公証役場に出向き、公証人の面前で、司法書士に対する委任状に署名して実印を押し、その委任状に公証人が認証文をつけます。

心配ならどうする

登記をするには、権利証以外に、実印や印鑑証明書が必要なので、権利証を盗まれたからと言って、不正に登記が行われる可能性は低いです。心配なら、法務局に紛失したことを伝えます。登記識別情報については失効させ、使用できなくすることができます。

関連条文
▽不動産登記法第22条
 登記権利者及び登記義務者が共同して権利に関する登記の申請をする場合その他登記名義人が政令で定める登記の申請をする場合には、申請人は、その申請情報と併せて登記義務者(中略)の登記識別情報を提供しなければならない。(後略)

不動産登記法