財産に貴金属があるときは、遺言書にどう書けばいいですか

遺産に関する遺言は、「誰に何をあげるのか」明確にしなければなりません。財産を特定できないと、遺産の引継ぎができません。

土地なら、地番や地目、面積など登記事項証明書に記載されている項目で特定できます。銀行口座なら銀行名・支店名、口座番号などを使います。いずれも、その財産に関する情報を拾い上げていきます。

遺言書に記載する貴金属の文例

遺言書に記載する貴金属情報

貴金属にまつわる情報としては、製造者、商品名、番号、素材、サイズなどがあり、貴金属本体や付属書類に記載されています。本体情報については、そのものの刻印されているため、いわば「身元情報」のようなもので、品物を特定する上で重要な意味をもちます。しっかり押さえておきましょう。

貴金属を遺言書に記載する一般的な項目の例

品目
製造者
商品名
製造番号
素材
サイズ

本体に刻まれている情報は?

貴金属本体に関する表示ルールとして、日本ジュエリー協会は、「主たる貴金属の種類並びに品位(質量)を本体に表示することで貴金属製品とみなされる」と定めています。本体に表示されるのは、「種類と品位プラスα」となります。具体的には以下のような情報です。

  • 宝石・金属情報
  • 製造者情報
  • 生産地情報
  • 番号情報検
  • 査合格を表す情報

どの情報を表示するかは商品によって異なります。刻まれているのは、指輪ならリングの内側、ネックレスなら取付金具などです。目立たなくても、しっかり読み取れるように打刻するのがルールです。

シリアルナンバーが大事

宝石情報は、宝石の種類や、重さを表すカラットが刻まれています。ダイヤモンドの1カラットなら、例えば「D1.00」となります。

金属情報は種類・純度を示します。純金なら「K24」、85%のプラチナなら「Pt850」です。92.5%以上の銀は「Sterling」と刻まれます。

製造者に関する情報は、ブランドのロゴなどです。生産国に関しては、日本製なら「Made in Japan」または「M I J P」となっています。

番号情報としては、シリアルナンバー(製造番号、品番、通し番号)とリファレンスナンバー(型番)がります。シリアルナンバーは、製造時期、製造国などを表し、鑑定士が本物か偽物か判断するときの拠り所となる重要番号です。ブランドや時期によって捉え方、表示ルールは違いますが、オンリーワンに近いものと考えてよいでしょう。これに対して、型番はモデルを表す番号で、同じモデルには同じ番号がついています。

付属書類を確認する

本体に刻印されていない情報は、保証書、鑑別所、鑑定書など付属書類で確認します。保証書は、製造者や販売元で発行する品質保証書です。鑑別書、鑑定書は鑑定機関で検査した内容を記したものですが、鑑定書はダイヤモンドのみ発行されます。

ダイヤなら4Cも重要

ダイヤモンドについては、鑑定書に記載のある以下の4つのC(4C)、つまり重さと3つの等級を遺言書に書くことも多いです。

カラットcarat重量
カットcut輝き
カラーcolor黄色味の程度
クラリティclarity透明度

どこまで書けばいいのか

貴金属は、基本的に「製造者とシリアルナンバー」がわかれば、ほぼ特定できると言えますが、もめごとがおきないとも限りませんので、第三者も納得しやすいよう、その他の情報も記載することが望ましいでしょう。

このほか、場所で特定する方法もあります。貸金庫に預けておいて、「遺言者が〇〇銀行○○支店の貸金庫内に保管する貴金属の全部」といった書き方も可能です。

関連規定
▽貴金属への打刻の要件
①本体への打刻は、装飾美観性と製品価値を損なわず、かつ容易に読み取れる位置に行う。
②打刻の記号や文字は、製品との調和と通常の目視での読み取りが可能な大きさ、書体、形式を用いる。
③一連の刻印の書体及び大きさは、同一でなければならない。ただし、(中略)品位証明マークの商標・ブランド等のマークは該当しない。

ジュエリー及び貴金属製品の素材等の表示規定(日本ジュエリー協会、平成29年度改訂版)