どんな生前贈与が特別受益になりますか

特別受益とされる生前贈与は「婚姻や養子縁組のため、もしくは生計の資本」として贈与された財産です。特別受益は、遺産分割協議の基礎となる財産に戻され、贈与を受けていた人は贈与分だけ相続分が減ります。持ち戻しは、被相続人の意思で免除することができます。それがなければ、持ち戻しの可否について相続人同士で決めればよいわけですが、全員が合意できなければ、裁判所の判断に委ねます。

その判断の基準は、「扶養義務の範囲内」なのか「遺産の前渡し」なのかです。判断は、各家庭の財産状況と贈与の額によって変わります。財産と比較して贈与の額が大きくなると「遺産の前渡し」の方に傾きます。

「婚姻」といえば、結納金、挙式費用、持参金、支度金などの出費があります。これらを贈与した場合、すべて特別受益とみなされるわけではありません。その地域の慣行に則った贈与額なら「扶養義務の範囲内」とみなされます。「親の交際費」的な見立てがされる結納や挙式費用は、特別受益とされないことが多いです。一方、高額の持参金や支度金は特別受益の対象になる可能性が高いです。

特別受益となる生前贈与

「生計の資本」の方はどうでしょうか。毎月、子供に仕送りしていれば、特別受益になるのでしょうか。これも財産総額と贈与額が焦点になります。2億円を上回る財産がある人が、相続人の1人に毎月10万円の生活援助をしても扶養義務の一環で特別受益にならないという家裁審判例があります。しかし、財産1000万円の人が何年にもわたって毎月10万円を渡していたら、これは特別受益になる可能性が高いでしょう。

自宅の敷地・建物の贈与も特別受益になります。しかし、婚姻期間が20年以上の配偶者に居住用不動産を贈与した場合は、持ち戻し免除の意思があったと推定されます。

親の土地を無償で使用していた場合は、使用貸借契約とみなして、借地相当額を特別受益として持ち戻すことがあります。しかし、親に持ち戻し免除の意思表示があったとして、持ち戻さないこともあります。

学資も問題になります。現在の教育状況では、大学の学費を負担したというだけでは、特別受益と判断されません。これも財産総額と学資の額の関係が焦点です。子供を私立大学の医学部に行かせ、卒業までに何千万円もかかれば特別受益になるケースが多いでしょう。しかし、高収入の医師の子供であれば、特別受益ではないという判断もありえます。

関連条文
民法903条
共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、(中略)相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。
2 遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者又は受贈者は、その相続分を受けることができない。
3 被相続人が前二項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思に従う。
4 婚姻期間が20年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは、当該被相続人は、その遺贈又は贈与について第一項の規定を適用しない旨の意思を表示したものと推定する。

民法

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