古い抵当権登記を抹消する方法を教えてください

相続の際に土地の登記簿謄本(全部事項証明書)を見て、古い抵当権を見つけて驚かれる方がいらっしゃいます。こうした抵当権を休眠抵当権といい、抹消しないと土地の売却が困難です。中には、明治期に設定されたものもあります。

抵当権は抹消されると、登記簿の記載に下線が引かれます。下線が引いていないということは、抹消する手続きがされていないということです。

休眠抵当権は単独申請で抹消可能

通常、抵当権の抹消は、所有者と抵当権者が共同して法務局に申請します。ですが、休眠抵当権の場合、多くは抵当権者がどこにいるのか明らかにすることが難しくなっています。そこで、例外的に所有者が単独で抵当権登記の抹消を申請することができます。

単独で抹消手続きをするための要件

  • 抵当権者が行方不明
  • 弁済期から20年以上が経過
  • 債務者が債務履行地の法務局に元本、利息、損害金を供託
  • 供託書の正本を登記申請書に添付して申請
供託書記載例の一部

供託書の記載例の一部

昭和3年の100円借入…供託金額1,255円

供託金は次の計算式で導き出します。

供託金=元本+利息+遅延損害金

遅延損害金とは、債務を履行しないことによって生じた損害額です。遅延損害金については、法務省が計算ソフトを作成していてダウンロードして使えます。

100年近く経っていると遅延損害金はどのくらいになrのでしょうか。

試しに以下のデータを入力してみると

借入年月日昭和3年1月1日
債権額100円
利息月1%
損害金利率年10%
弁済期昭和3年12月31日
供託年月日令和6年4月1日

利息12円、損害金が95年92日分1,143円、供託金額は1,255円と出ました。

抵当権者が法人の場合

休眠抵当権の場合、抵当権者である法人がすでに解散しているケースも少なくありません。清算人が死亡していた場合や、調査しても清算人の所在が判明しない場合は、弁済期と法人解散からいずれも30年経過していれば、単独で抹消を申請することができます。裁判所に新たに清算人を選任してもらわなくてもよくなりました。これは令和5年4月に施行された新制度です。

関連条文
▽不動産登記法70条
登記権利者は、共同して登記の抹消の申請をすべき者の所在が知れないためその者と共同して権利に関する登記の抹消を申請することができないときは、非訟事件手続法(平成二十三年法律第五十一号)第九十九条に規定する公示催告の申立てをすることができる。
(中略)
4 第一項に規定する場合において、登記権利者が先取特権、質権又は抵当権の被担保債権が消滅したことを証する情報として政令で定めるものを提供したときは、第六十条の規定にかかわらず、当該登記権利者は、単独でそれらの権利に関する登記の抹消を申請することができる。同項に規定する場合において、被担保債権の弁済期から二十年を経過し、かつ、その期間を経過した後に当該被担保債権、その利息及び債務不履行により生じた損害の全額に相当する金銭が供託されたときも、同様とする。

不動産登記法