遺言書で相続人に「相続させる」と書いたときと「遺贈する」と書いたときでは、何か違いはありますか

相続人に財産を承継するときは「相続させる」、それ以外の人に承継させるときは「遺贈する」と書くのが基本です。では、相続人に「遺贈する」と書くと何が変わるのでしょうか。

税金は変わりませんが、相続手続きなどは変わります。

相続人に対する「相続させる」と「遺贈」の違い

「相続させる」遺言
(特定財産承継遺言)
相続人に対する特定遺贈
税金相続税、登録免許税(0.4%)同左
不動産登記相続人(又は遺言執行者)が単独で登記申請相続人は他の相続人全員(又は遺言執行者)と共同申請
利益放棄相続放棄又は、相続人全員の同意で遺言と異なる遺産分割遺贈放棄

税金は同じ

税金に関しては同じです。同じように相続税を計算し、不動産取得税はかからず、登録免許税は0.4%です。遺贈だと贈与税がかかると思っている人がいますが、課税されるのは相続税です。

不動産手続きは異なる

一方、不動産登記手続きでは異なります。「相続させる」では、不動産を受け取る相続人が単独で登記申請をすることができますが、遺贈では相続人全員(又は遺言執行者)と共同で登記申請しなければなりません。

利益放棄も変わる

利益放棄の仕方も異なります。遺贈を放棄しても相続権は失いません。法定相続分をもらうことができます。自分だけもらい過ぎず、他の相続人と平等な遺産取得を求める人がいますが、そういう人は遺贈放棄すれば足ります。特定の財産についての遺贈放棄は他の相続人に伝達すればOKで、家庭裁判所に申し立てる必要はありません。

一方、「相続させる」場合は、その分だけを放棄することはできず、家庭裁判所に相続放棄を申し立てるか、遺言と異なる遺産分割について他の相続人と合意する必要があります。相続放棄すると、相続権はなくなり、一切の財産を取得できません。

関連条文
▽民法986条
受遺者は、遺言者の死亡後、いつでも、遺贈の放棄をすることができる。
2 遺贈の放棄は、遺言者の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。


民法

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