後見の申立てに必要な医師の診断書はどのようなものですか

家庭裁判所に後見開始の審判を申立てる際に、添付を求められる書類のなかに医師の診断書があります。診断書には裁判所の書式があり、最高裁事務総局家庭局はそれを使うよう求めています。この書式は、後見類型について判断しやすくなっていて、診断書を作成する医師の負担を減らすよう、チェック式で回答できる部分が多くなっています。

判断能力についての意見4項目

診断書のなかで特に大事なのが、「3」の「判断能力についての意見」です。

そこには4つの項目が並んでいて、いずれかにチェックを入れます。

  • 契約等の意味・内容を自ら理解し、判断することができる
  • 支援を受けなければ、契約等の意味・内容を自ら理解し、判断することが難しい場合がある
  • 支援を受けなければ、契約等の意味・内容を自ら理解し、判断することができない
  • 支援を受けても、契約等の意味・内容を自ら理解し、判断することができない

チェックでは意見を伝えられない場合は、「意見」欄に記します。

この②が「補助」に、③が「保佐」に、④が「後見」に該当します。支援を受けることによって「判断できる」と「判断できない」が「保佐」と「後見」の分かれ目です。

「契約等」とは、不動産の売買、自宅の増改築、金銭の貸し借りなどを、「支援」とは、家族が本人にわかりやすい言葉で説明することなどを想定しています。

民法では、

補助精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者(14条)
保佐精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者(11条)
後見精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者(7条)

と規定しています。診断書の様式では、この規定を契約の場面に置き換えているわけです。

各種検査の結果も

このほか診断書では、「長谷川式認知症スケール」「脳画像検査」などの検査結果を記します。「判断能力についての意見」の根拠として、見当識、意思疎通、記憶力などの障害の程度についてもチェック項目があります。

鑑定も必要?

保佐、後見は原則として医師の鑑定が必要ですが、診断書で判断できるときには家庭裁判所は鑑定を行いません。診断書は鑑定の要否を判断する材料にもなるわけです。診断書にかかる費用は、数千円から1万円程度です。鑑定には10万円から20万円の費用と1か月程度の時間がかかります。

診断書はだれに頼む?

後見のための診断書を作成する上で、医師に特別な資格は必要ありません。かかりつけ医がいるときは、その医師に、いないときは精神科や心療内科などの医師に依頼します。かかりつけ医ならすぐに書くことができます。そうでない場合は、2,3回の診察を経て作成しますので1か月程度かかるでしょう。ケアマネージャーらが作成する「本人情報シート」を渡すと、スムーズに診断書を書いてもらえます。

関連条文
家事事件手続法119条
家庭裁判所は、成年被後見人となるべき者の精神の状況につき鑑定をしなければ、後見開始の審判をすることができない。ただし、明らかにその必要がないと認めるときは、この限りでない。
家事事件手続法133条
第119条の規定は被保佐人となるべき者及び被保佐人の精神の状況に関する鑑定及び意見の聴取について(中略)準用する。

家事事件手続法

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