遺言書で祭祀主宰者(承継者)に指定されました。何をしなければなりませんか

お墓を管理し法要をしきる

第〇条 遺言者は、祖先の祭祀を主宰すべきものとして、長男橿原太郎を指定する

このように遺言で祭祀主宰者を指定することがあります。指定された人は「なにをしたら」と戸惑う人もいるでしょう。祭祀とは祖先をまつることです。祭祀主宰者とは、祭祀財産を承継し祖先まつる人、簡単いうと、お墓を管理し法要をしきる人です。祭祀財産の所有者ですので、それらを自分の判断で売買などの処分をことことができます。

祭祀主宰者の仕事

  • 墓地など祭祀財産の管理
  • 祭祀財産の処分
  • 年忌法要、お盆・彼岸の供養の主宰

法的な義務ではない

しかし、こうした仕事は、指定された祭祀主宰者の法律上の義務ではありません、祭祀財産の管理をしなくても、法要をしなくても、罰されることはないのです。このような立場ですので、祭祀主宰者の放棄や辞退に関する規定はありません。

ただし、義務ではないからと、祭祀主宰者がお墓の管理費を払わなかったら、管理者が無縁墓として改葬の許可を受けてお墓を撤去する可能性があります。

祭祀主宰者のイメージ写真

3つの祭祀財産

祭祀財産は3つのタイプに分かれます。家に関する資料的なもの(系譜)、おまつり用の道具(祭具)、お墓の権利や施設(墳墓)です。

祭祀財産

系譜家系図、過去帳
祭具位牌、仏壇、仏具、神棚、十字架
墳墓墓石、墓碑、墓地の土地所有権・使用権

*遺骨は祭祀財産に準じて扱い、祭祀主宰者に帰属します

相続財産に含まれない

祭祀財産は相続財産に含まれません。したがって、祭祀を担うからといって、余計に遺産をもらう権利はありません。指定する主宰者が祭祀費用に困らないよう、財産を多めに相続させる遺言を書いておく人もいます。遺言がない場合、祭祀費用を考慮してもらいたいなら、他の相続人との遺産分割協議で折衝することになります。

一方、祭祀財産の価値が高いからといって、相続財産を減らされることもありません。また、祭祀財産には基本的に相続税がかかりません。

親族でなくてもよい

祭祀主宰者になるには特別な制約はなく、相続人や親族でなくてもよく、氏が違ってもかもいません。成年後見人でも可能です。原則1人ですが、事情があれば2人を指定することもできます。祭祀主宰者の決め方は以下のようになります。

祭祀主宰者の決め方

  • 遺言などで被相続人が指定
  • 指定がないなら相続人で協議する又は慣習に従う
  • 決まらない場合は家庭裁判所に「祭祀主宰者指定の審判」を申立て

公正証書遺言では別途手数料

公正証書遺言では、祭祀主宰者を指定するときは、別に公証役場の手数料1万1000円が発生します。相続や遺贈とは別の法律行為にあたるからです。

関連条文
民法第897条
系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。
2 前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。
相続税法第12条
次に掲げる財産の価額は、相続税の課税価格に算入しない。
一 (略)
二 墓所、霊びよう及び祭具並びにこれらに準ずるもの

民法、相続税法