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どのような債務であれば相続税の課税対象となる財産から控除できますか
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故人に5000万円の財産と5000万円の借金があったとすると、実質、遺産はゼロです。それなのに、5000万円を対象として相続税が課されると相続人はたまったものではありませんね。そこで、債務は遺産総額から差し引けることになっています。これを債務控除といいます。
遺産総額から控除できるもの
しかし、故人や故人の財産に関して支払わなければならないものすべて控除できるというわけではありません。差し引けるのは「被相続人が死亡したときにあった債務で、確実と認められるもの」です。
確実な債務
「確実な債務」とはどんなものでしょう。
- 金融機関などからの借金
- 病院や介護施設などの未払金
- 水道代、電気代などの未払金
- 故人の納めていない所得税、住民税、固定資産税、都市計画税などの税金
所得税は「準確定申告」した未納分が控除されます。住民税は1月1日に住所がある人に、前年中の所得に基づいて課されるので、その年度1年分は払わなくてはならず、この分が控除されます。固定資産税も、1月1日現在の所有者にその翌年度分が課税され、これを支払わなければなりません。
葬儀費用
故人の債務ではないももの、控除される出費もあります。葬儀費用です。葬儀費用に含まれるのは、告別式やお通夜、埋葬にかかった費用です。これには飲食費も含まれます。しかし、初七日や四十九日などの法要や香典返しにかかった費用は控除されません。
遺産総額から控除できないもの
控除の対象とならない「確実ではない債務」とはどのようなものがあるでしょう。
確実ではない債務
- 財産の維持管理費用
故人が亡くなった後に、財産の維持・管理のためにかかった費用 - 連帯保証債務
連帯保証人となっているケースでは、債務者が借金を全部払えば、連帯保証人は1円も負担する必要がないわけですので、「確実な債務」とはいえず、控除されません。しかし、亡くなった時点で、債務者が返済不能となっているケースでは、控除できます。 - 士業者に支払う報酬
相続手続きで行政書士に支払う報酬、登記にかかる司法書士報酬、相続税申告にかかる税理士報酬などです。 - 遺言執行費用
故人が決めた遺言執行者に対する報酬ですので、遺産総額から控除できてもよさそうなものですが、税務当局はそう考えません。遺言は死亡時に効力が発生するので、相続人が負担すべきものと考えます。
非課税財産に関する債務
墓地や仏壇などの財産は、そもそも相続税が課税されません。したがって、被相続人が購入してお金を払っていなかったとしても控除されません。
債務控除を利用できる人
債務や葬儀費用を遺産総額から控除できるのは、相続人や包括受遺者が払ったお金です。相続放棄した人、特定受遺者らは債務控除を利用できません。
関連条文
相続税法基本通達
▽相続税法基本通達13-2
民法第885条((相続財産に関する費用))の規定により相続財産の中から支弁する相続財産に関する費用は、法第13条第1項第1号に掲げる債務とはならないのであるから留意する。
▽相続税法基本通達14-1
債務が確実であるかどうかについては、必ずしも書面の証拠があることを必要としないものとする。なお、債務の金額が確定していなくても当該債務の存在が確実と認められるものについては、相続開始当時の現況によって確実と認められる範囲の金額だけを控除するものとする。