農地転用の申請で、どんな人の同意・承諾が必要になりますか

農地転用許可を受けるためには、農地そのものの現状や事業計画ばかりではなく、その農地に関係する人や機関の同意・承諾が鍵になってきます。ときには、転用計画そのものより、この同意を得るために多大の労力を要することがあります。

土地に権利を持つ人や水利権者

農水省のルールでは、その土地について権利をもっている人、水利権者、土地改良区の同意や承諾などを得なければなりません。窓口となる市町村の農業委員会では、このほか、隣接農地の所有者や耕作者の同意、農業委員(農地利用最適化推進委員)の確認などを求めます。

隣地同意は必要なの?

このうち、隣接農地の同意は、里道や水路をはさんだ農地や、農地以外の土地については必要ありません。また、行政側が同意を求めるのは行政指導に過ぎず、同意がないという理由だけで転用許可を拒むことはできません。隣地所有者が行方不明などの理由で同意を得ることができなければ、事情を説明する書面を提出すればよいでしょう。

農水省のルールは?

農地転用申請で、都道府県や市町村の農業委員会が求める必要書類は、農水省の「農地法に係る事務処理要領」をカスタマイズしたものになっていますので、まず、農水省の要綱を見てみましょう。

農水省の要綱で、農地転用の同意・承諾に関する書面は以下のようなものです。

①当該農地

申請者以外の人で、土地について権利を持っている人の同意が必要です。

申請者が所有者の場合

同意書地上権、永小作権、質権又は賃借権に基づく耕作者が押印

申請者が所有者以外の場合

同意書所有者が押印

②水利権者

水利権とは、河川管理者の許可を受けて河川の水を利用する権利です。農業の水利権者は、水利組合であったり、集落(自治会)、土地改良区であったりします。

同意書水利権者が押印

③土地改良区

土地改良区は、農地や水利施設の整備や管理をしている法人です。奈良では「大和平野土地改良区」などがあります。農地転用の際は、精算金を払って土地改良区から脱退する手続きも行います。

意見書土地改良区が押印

奈良県では

奈良県が農地転用の許可申請の際の同意・承諾書類として例示しているのは、「農地を転用する行為の妨げとなる権利を有する者の同意書」「土地改良区の地区内にある場合には、当該土地改良区の意見書」の二つです。農水省要綱に準ずるルールになっています。

市町村では

次に奈良県内の市町村農業委員会が求める同意・承諾書類をみていきます。ここで、農水省の要綱にはない「隣地同意」が出てきます。

奈良市では、隣接農地の所有者らと水利権者の署名押印欄を1枚に収めた「同意書」が用意されています。この同意書とセットで、隣接農地の地目、所有者、耕作者氏名を記載した「隣接地明細書」を提出します。

農業委員については、申請の内容について、申請者側から説明しておくよう求められます。土地改良区に関しては、「農地転用等通知書及地域内調書」「地区除外申請書及誓約書」の提出を求められます。

奈良市で必要な同意・承諾書類

同意書水利権者が押印
隣接農地の所有者、耕作者が押印
承諾書抵当権者、仮登記権者が押印
通行する土地の所有者が押印
その他書面「賃貸借契約の解約について」に賃借人の実印押印

奈良市の農地転用同意書

生駒市でも奈良市と同様、隣接農地の所有者らと水利権者が同意印を押す「同意書」が用意されています。また、申請書が最適化推進委員を経由したことを明確にするために、「農業委員連絡用紙」があり、そこに最適化推進委員が経由印を押します。

生駒市で必要な同意・承諾書類

同意書隣接農地、水利組合
承諾書仮登記権利者
意見書土地改良区
その他農地利用最適化推進委員が、「農業委員連絡用紙」に「経由印」を押す

関連条文
農地法第4条第1項
農地を農地以外のものにする者は、都道府県知事(略)の許可を受けなければならない。
第6項
第一項の許可は、次の各号のいずれかに該当する場合には、することができない(略)
三 申請者に申請に係る農地を農地以外のものにする行為を行うために必要な資力及び信用があると認められないこと、申請に係る農地を農地以外のものにする行為の妨げとなる権利を有する者の同意を得ていないことその他農林水産省令で定める事由により、申請に係る農地の全てを住宅の用、事業の用に供する施設の用その他の当該申請に係る用途に供することが確実と認められない場合

農地法