遺産分割協議の対象となる遺産の評価は、どの時点での評価になりますか。

相続人の間で決められる

相続人全員が合意すれば、いつの評価を基準にしてもかまいません。相続開始時(被相続人の死亡時)の評価でもよいし、遺産分割時でもよい。評価の基準時が問題になるのは、相続人間で対立がある場合でしょう。遺産というのは、時間の経過によって、増えたり減ったりするので、基準時によって不公平感が出やすいのです。

遺産評価のカット写真

基本は遺産分割時

基準時が問われる場合はどうするのか。実務では、遺産分割時が基準になります。相続開始時ではありません。例えば遺産分割協議に5年かかったとして、その間に価値が半分になった上場株式を、相続開始時の評価で相続した人は損をします。こういったことが起こらないように、分割時を基準にしているのです。

特別受益・遺留分は相続開始時

ただし、持ち戻される特別受益は、相続開始時を基準として評価されます。特別受益とは、婚姻費用や生計の資本などとして被相続人から贈与された財産です。ずっと昔に贈与されたものでも相続開始時に評価し直します。また、遺留分算定の基礎となる評価も相続開始時が基準となります。寄与分の算定も同様です。

減ってしまった財産はどう扱う?

預貯金については、相続人の1人が自分のために使い込んで、相続開始時より大幅に減っているときはもめます。この場合は、減った分を相続財産として協議しなければ、合意は難しいでしょう。

令和元年7月施行の改正民法で、

  • 共同相続人全員の同意がある
  • 財産を処分した相続人以外の相続人の同意がある

のいずれかであれば、処分された財産を、遺産分割時の遺産とみなすことができると規定しました。「使ったもの勝ち」ではないのです。

税金は相続開始時

税金の基準時は、遺産分割とは異なります。預貯金の相続税評価は、相続開始時の残高です。混同しないようにしましょう。

関連条文
906条の2
遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合であっても、共同相続人は、その全員の同意により、当該処分された財産が遺産の分割時に遺産として存在するものとみなすことができる。
2 前項の規定にかかわらず、共同相続人の一人又は数人により同項の財産が処分されたときは、当該共同相続人については、同項の同意を得ることを要しない。

民法

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