家庭裁判所の遺言書の検認は何をする手続ですか

まず、遺言書の検認は、遺言書の有効無効を判断するものではありません。これについては誤解している人がいます。検認を受けたからといって、遺言書の有効性について家裁のお墨付きを得たわけではないのです。したがって、検認を受けた後でも、遺言書の無効を求めることはできます。

では、検認は何のためにするのでしょうか。その目的は、遺言書の保全と相続人への周知です。「遺言者はこういう遺言書を書いています」ということを相続人全員に対してはっきりさせます。これによって、遺言の内容を「動かないもの」として、偽造・変造を防ぎます。

遺言書の提出と検認を法律で義務付けなければ、他の相続人が知らないうちに、保管者や発見者が隠したり、変造したりする可能性を排除できません。

検認が必要な遺言書は

  • 自筆証書遺言(法務局の保管制度を利用していないもの)
  • 秘密証書遺言

です。公正証書遺言は検認の必要がありません。法務局の保管制度を利用した自筆証書遺言も、偽造・変造の恐れがないため検認は不要です。

手続きは以下のように行います。

  • 保管者または相続人である発見者が家庭裁判所に検認を申立て
    家裁は遺言者の最後の住所地を管轄する所です
  • 家裁が相続人に対して検認を行う日(検認期日)を通知
    申立人以外の相続人が検認に出席するかどうかは自由です。欠席者には後日、検認済通知が届きます(遺言書のコピーは付いていません)
  • 検認期日に相続人らが家裁に集合
    裁判官が遺言書を開封して検認します
  • 遺言執行(相続手続き)に必要な検認済証明書を申請、取得

検認申立てから検認期日までに通常、数週間から1か月程度かかります。費用は、遺言書1通につき収入印紙800円分です。

検認の申立てに必要な書類

  • 申立書
  • 遺言者の出生から死亡までの戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 相続人全員の戸籍謄本

相続人が配偶者のみ、または配偶者と兄弟姉妹の場合は、遺言者の父母の出生から死亡までの戸籍(同)謄本などが必要です。このほか、ケースによって必要書類は変わります。詳しくは裁判所のサイトをご覧ください。

検認が必要なのに検認を受けていない遺言書を、相続手続きに使うことはできません。名義変更などについて、不動産は法務局が、預貯金は金融機関が受理してくれません。また、検認なしで遺言執行すると5万円以下の過料に処せられます。

関連条文
民法1004条
遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする。
2 前項の規定は、公正証書による遺言については、適用しない。
3 封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができない。
民法1005条 
前条の規定により遺言書を提出することを怠り、その検認を経ないで遺言を執行し、又は家庭裁判所外においてその開封をした者は、五万円以下の過料に処する。

民法

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