過料を払わないと逮捕されますか

2024年の相続登記の義務化で、理由なく登記を怠った人に10万円の過料が課せられることから、相続の場で改めて過料に注目が集まっています。先祖の名義のままになっている土地を抱えている人から「過料を科されたらどうしよう」「払わないと逮捕されるのだろうか」といった不安の声を聞きます。

過料に関するイメージ写真

過料を払わないと財産差し押さえも

国でも地方自治地でも過料は「債務」として扱われます。したがって、過料を払わないと、「債務」を履行しないときと同様、財産を差し押さえられることがあります。しかし、身柄を拘束され刑務所に入ることはありません。過料は、罰金と違って「前科」にもなりません。

過料は一種の行政処分

過料は、金銭的負担を課す一種の行政処分です。「罰」ではあるけれど「刑罰」ではない、という位置付けが、わかりにくさの原因になっています。過料の目的はなにかというと、行政上の秩序の維持です(秩序罰といいます)。ルールを守らない人がいると秩序が守れないために設けられた「罰」です。「刑罰」ではないので、刑法や刑事訴訟法は適用されません。

民事執行法に従って

過料には法律上の過料と条例上の過料があります。法律上の過料は、一般的に非訟事件手続法により処理します。非訟事件(ひしょうじけん)とは、裁判所が、訴訟手続きによらずにかんたんな手続きで処理する事件です。過料の金額は、裁判所が法律の範囲内で決定します。徴収は検察庁が行います。非訟事件手続法では、「民事執行法その他強制執行の手続に関する法令」に従って処理すると書かれています。強制執行つまり差し押さえがありうるということです。

一方、地方自治体の条例で定める過料は、滞納された地方税のように処理します。督促しても過料が納められないときは、徴税部門の職員によって財産を差し押さえられる可能性があります。

過料は年間10万件

令和2年末現在で、過料についての規定がある法律は600件ほどあります。司法統計年報によると、非訟事件手続法第5編の規定が適用された過料件数は令和元年で10万7010件ありました。

どんなときに過料を科される?

相続とかかわりの深いところでは、民法、不動産登記法などに過料が定められています。

例えば、民法では、遺言書を家庭裁判所外において開封したときは5万円以下の過料に処するとしています。

不動産登記法では、以下の申請を1か月以内にしなければ、10万円以下の過料に処されることになっています。

  • 地目に変更があったとき
  • 表題登記のない建物の所有権を取得したとき

相続を機に農地の地目変更をしたり、未登記の建物を取得することも多いので注意しましょう。

他の法律・条令で相続に関するものとしては、軽自動車の名義の変更が遅れると、10万円以下の過料を科される自治体があります。相続を機に実家が空き家になることがありますが、空き家をちゃんと管理せずに放置していると、危険・有害な建物として特定空き家に指定される恐れがあり、特定空き家に関する命令に違反した場合は50万円以下の過料となります。

関連条文
非訟事件手続法121条
過料の裁判は、検察官の命令で執行する。この命令は、執行力のある債務名義と同一の効力を有する。
2 過料の裁判の執行は、民事執行法(昭和五十四年法律第四号)その他強制執行の手続に関する法令の規定に従ってする。ただし、執行をする前に裁判の送達をすることを要しない。
地方自治法231条の三
1~2(略)
3 普通地方公共団体の長は、分担金、加入金、過料又は法律で定める使用料その他の普通地方公共団体の歳入(以下この項及び次条第一項において「分担金等」という。)につき第一項の規定による督促を受けた者が同項の規定により指定された期限までにその納付すべき金額を納付しないときは、当該分担金等並びに当該分担金等に係る前項の手数料及び延滞金について、地方税の滞納処分の例により処分することができる。この場合におけるこれらの徴収金の先取特権の順位は、国税及び地方税に次ぐものとする。

非訟事件手続法・地方自治法

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