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きょうだいで遺産分割協議をしています。実家に住んでいて、これからも住み続けることになっている兄が、家や土地は公的な「固定資産税評価額」をもとに評価するべきだと主張しています。その評価額は、最近、近所で売れた同じような家の価格よりずっと安く、不公平に感じます。ほかの評価方法はありませんか。
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遺産分割においては、不動産は「時価」によって評価します。時価の「時」は、一般的には、被相続人が亡くなった時ではなく、遺産分割した時のものです。実際に評価する方法にはさまざまな種類があり、法律で決まっているわけではありません。
また、相続税課税における評価と遺産分割における評価は別ものです。相続税課税における土地の評価は、国税庁の財産評価基本通達で「路線価方式」と「倍率方式」の二つが定められていますが、これは遺産分割における評価を制約するものではありません。相続人同士が合意できるなら、どのような評価方法を選択してもかまわないのです。これが、ある時はもめごとの原因となり、ある時はもめごとの回避につながります。
主な評価方法は次の三つです。
①公的な指標(固定資産税評価額、相続税路線価、公示価格)
②不動産業者の見積り
③不動産鑑定士による鑑定
それぞれの、メリット・デメリットを比較してみましょう。
メリット デメリット ①公的な指標 公正、公平の印象 実勢価格より低くなる ②不動産業者の見積り 実勢価格を反映できる 業者によって評価が異なる ③不動産鑑定士による鑑定 実勢価格を踏まえ、しかも客観性がある 鑑定費用が高い ③がもっとも厳密で客観的ですが、費用負担が難しい場合もあります。
①か②か、という選択であれば、不動産を相続しない相続人の立場からすると、不動産の評価が高いほど、それ以外の預金等の取り分が増えるので②が好ましい。不動産を相続する立場からすると、不動産評価が低いほど負担が少なくなりますので①を望むでしょう。
話し合いでは、①と②の間で折り合うこともあります。不動産の相続人が親の介護に尽くしていた場合は①寄りの評価にする、不動産を相続しない相続人が経済的に苦しい状況であれば②に近い評価にする、お互いにこうした譲歩して合意を目指します。話し合いで解決できなかったときは裁判所に「遺産分割調停」を申し立てることになり、調停も不成立となった場合は「審判」に移行し、裁判所が結論を出します。