通院したときに病院内で高齢者の介助を行うのは、病院と介護事業者のどちらですか

高齢者のサポートでは、支援側のだれが担うべき業務なのか、わかりにくいものがあります。典型的なのが、病院内での介助「院内介助」です。病院に到着し、診療前後の高齢者を介助するのは、病院スタッフなのか、介護スタッフなのか、どちらなのでしょうか。

介護タクシー

院内介助については、介護スタッフが病院まで付き添うため、その延長線上で介助するのが望ましいという考え方がある一方で、病院の中のことは病院スタッフが対応すべき、という考え方もあります。

院内介助は、病院スタッフが基本

要介護1~5の人の介護タクシーによる通院で、短時間の乗降介助、受診手続きや薬の受け取りなどをする場合の「院内介助」をみていきます。

厚生労働省の平成15年5月8日の通知「『通院等のための乗車又は降車の介助が中心である場合』及び『身体介護が中心である場合』の適用関係等について」では、「院内の移動等の介助は、基本的には院内のスタッフにより対応されるべきものであるが、場合により算定対象となる」としています。

院内介助は、基本的に病院スタッフが対応し、例外的に、介護スタッフが介助して介護保険の適用を受けることができる――というのが厚労省の姿勢です。

病院・医院内の介助

基本…院内スタッフ対応

例外…介護スタッフが対応

院内介助の介護保険適用状況

※移動にかかるタクシー料金は介護保険の対象になりません。

※通院等乗降介助の単位数は往路、復路それぞれ97単位です

病院が対応できなければ…

それでは、介護保険の対象となる「場合」とは、どのようなものなのでしょうか。

これについては、平成22年4月28日の厚生労働省事務連絡に「訪問介護における院内介助の取扱いについて」に記載があります。

「院内介助」が介護保険の対象になるかどうかについては、「各保険者の判断」としながらも、▽適切なケアマネジメントを行っている▽院内スタッフによる対応が難しい▽利用者が介助を必要とする心身の状態である――ことが算定の要件になっている例が多いと紹介しています。

また、「介助を必要とする心身の状態」として、

  • 院内の移動に介助が必要な場合
  • 認知症その他のため、見守りが必要な場合
  • 排せつ介助を必要とする場合

をあげています。

待機時間は算定除外

それでは、保険者である市町村の対応を奈良県内で見てみましょう。

香芝市では、「医療機関内における介助は基本的には医療機関に属するスタッフが対応すべき」とし、介護保険で院内介助を提供するには、なぜ医療機関が対応できないのか明確化するよう求めています。また、利用者に直接サービスを提供しない待機時間は、算定から除外されます。

院内介助を介護保険対象として算定する場合は、初回のサービスの前に、事業者が市に届け出ます。届出書には、利用者の心身の状態、院内介助の中身、通院先との協議内容などを記入します。

香芝市の訪問介護の院内介助算定届出書の一部