解体補助金の対象となる「不良住宅」と「特定空家」はどう違うのですか

空き家の解体に関しては、「不良住宅」「特定空家」という二つのキーワードがあります。この二つに当てはまると、解体の際に補助金が出るので、混同されがちですが、判断基準、ペナルティーには大きな違いがあります。

不良住宅は、住宅が密集した地域の改良事業に関して使われてきた言葉であるのに対し、特定空家は、空き家問題の解消を目的とした新制度で使われ始めた言葉です。

空き家の庭先の写真

不良住宅とは

住宅地区改良法という法律で規定されています。不良住宅は「構造又は設備が著しく不良であるため居住の用に供することが著しく不適当」な建物です。住むことが不適当なほど状態が悪化した住宅を指します。空き家ばかりではなく、人が住んでいても、不良住宅認定の対象になります。

100点以上なら認定

不良住宅の不良度の測定基準は、住宅地区改良法施行規則の別表に定められており、全国一律の指標となっています。この別表では、項目ごとに「評点」が決められていて、その合計が100点以上だと不良住宅と認定されます。別表の一部を見てみましょう。

別表の一部

評定項目評定内容評点
基礎、土台、柱又ははり柱が傾斜しているもの、土台又は柱が腐朽し、又は破損しているもの等小修理を要するもの25
外壁又は界壁外壁又は各戸の界壁の仕上材料の剝はく落、腐朽又は破損により、著しく下地の露出しているもの又は壁体を貫通する穴を生じているもの25
屋根屋根が著しく変形したもの50

ここであげた3項目を合わせるとちょうど100点です。柱が傾き、広い面積で外壁が落ち、屋根が湾曲している住宅は「不良住宅」と認められるわけです。

市町村に申請

解体補助金の支給を受けるため不良住宅に認定してもらう際は、市町村に対して、位置図や現況写真などを添えて申請する必要があります。

不良住宅に認定されたからといって、それ自体に罰則はありません。不良住宅が密集したエリアで住宅地区改良事業に支障をきたす行為を行い、命令に従わない場合などに「6月以下の懲役又は3万円以下の罰金」に処せられます。

特定空家とは

一方、特定空家は、空家等対策特別措置法で規定されています。特定空家は「そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等」です。

不良住宅が建物の構造・設備に力点が置かれているのに対して、特定空家では、それらに加え衛生・景観・環境が重視されます。「家そのもの」で認定されるのが不良住宅、近隣状況を含めて判断されるのが特定空家です。

地域ごとに基準

判断基準は地域ごとに定められています。

奈良県大和高田市の評価指標では、A判定に該当する状況が1つ以上あるかB判定が3つ以上あるときは、特定空家と判断されます。

A判定を受ける状態としては、「建物の傾きが明らかに確認できる」「複数の柱、はり又は筋かいに大きな亀裂、多数のひび割れ等がある、又は複数の柱及びはりにずれが発生している」「吹付け石綿等が飛散し暴露する可能性が高い状況である」などがあり、

B判定としては「ごみ等の放置又は不法投棄による臭気や多数のねずみ、はえ、蚊等の発生がある」「多数の窓ガラスが割れたまま放置されている」「周辺の道路、家屋の敷地等に土砂等が大量に流出している」などがあります。

大和高田市の評価指標

行政代執行も可能

特定空家と判断すると、市町村は以下のように段階を踏んで対応し、最終的には行政が強制的に解体を行う行政代執行ができます。

  • 助言・指導
  • 勧告
  • 命令
  • 行政代執行

50万円以下の過料

ペナルティーが厳格なのが特定空家です。指定されると、住宅があるために固定資産税が安くなる特例(住宅用地の特例)を受けられなくなります。

また、市町村長が修繕や解体・撤去などの命令をしたのに従わないと50万円以下の過料対象となります。市町村長に対してうその報告をしたり、立ち入り調査を拒んだりした時は20万円以下の過料に処せられます。

※住宅用地の特例
住宅の敷地で200平方メートル以下の部分について、固定資産税の課税標準額が評価額の6分の1に、200平方メートルを超える部分について3分の1になる特例。都市計画税も軽減される。

関連条文
住宅地区改良法第2条第4項
この法律において「不良住宅」とは、主として居住の用に供される建築物又は建築物の部分でその構造又は設備が著しく不良であるため居住の用に供することが著しく不適当なものをいう。

住宅地区改良法