介護施設に入所したいのですが、身元保証人になってくれる人がいません。どうしても身元保証人は必要なのですか

厚労省「身元保証人なしで入所できる」

子供がいない高齢者にとって、身元保証人を立てることは難しいことです。にもかかわらず、介護施設が身元保証人を求めるケースが少なくありません。本来、介護施設に入所するにあたって身元保証人は要りません。厚生労働省は、「身元保証人等がいなくても介護施設に入所できる」いう立場です。

介護施設入所に身元保証には必要か――のイメージ写真

拒否の正当な理由に該当せず

平成30年3月6日の全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議の資料では以下のように記載されています。

介護保険施設に関する法令上は身元保証人等を求める規定はない。また、各施設の基準省令において、正当な理由なくサービスの提供を拒否することはできないこととされており、入院・入所希望者に身元保証人等がいないことは、サービス提供を拒否する正当な理由には該当しない
  介護保険施設に対する指導・監督権限を持つ都道府県等におかれては、管内の介護保険施設が、身元保証人がいないことのみを理由に入所を拒むことや退所を求めるといった不適切な取扱を行うことのないよう、適切に指導・監督を行っていただきたい。

令和5年も含め、同会議では繰り返しこの点が言及されています。

地域包括センターにも通知

また、市町村や地域包括支援センターで、身元保証に関する相談を受けた時に、適切な助言ができるように、厚生労働省老健局高齢者支援課と振興課が発出した通知(平成30年8月30日)でも同様なことが述べられています。

施設入所を拒否できるのは、正当な理由がある時で、身元保証人がいないことは、正当な理由に該当しないのです。

身元保証人を求められたら?

受け入れ拒否をにおわせながら身元保証人を求めてくる介護施設は、国のこうした姿勢に反する「不適切な取扱」をしている施設だといえます。そのような要求をされた場合は、地域包括支援センターに相談しましょう。身元保証人を立てられないからといって、介護サービスを受けられない事態は、あってはならないことです。

なぜ身元保証人を求めるのか

施設側が身元保証人を求めてくるのは、入所者に関して「困ったこと」があったときに対応を求める相手がほしいからです。具体的には、①未払い利用料の支払い②施設内のトラブルの対応③緊急時の連絡先④亡くなった後の身柄の引き受けや片づけ――などが求められます。

全国11,000の施設や事業者が会員となっている公益社団法人「全国老人福祉施設協議会」の利用契約書のひな形では、身元保証人について、

「契約利用者と連帯して、本契約から生ずる契約利用者の債務を負担する」「契約利用者の緊急事態等に対応できる方(施設近隣市区町村在住の方等)を立てる」「契約利用者の身柄及び契約利用者の所有物を引き受ける責任を負う」といったルールを設けています。

身元保証事業者って大丈夫?

厚労省の通知の効果もあって、身元保証人を必須としない施設が増えてきました。こうした施設では、「保証人相談可」と案内しています。とはいっても、身元保証人の代わりに身元保証事業者の利用を求めてくるケースが多いのが実情です。

こうした身元保証事業者については、参入障壁が低いため十分な知見のないズサンな業者もいます。実際、トラブルが多数発生しており、消費生活センターなどに相談が相次いでいます。相談は▽十分な説明なく高額な預託金の支払いを請求された▽契約するつもりのなかったサービスが含まれていた▽約束していたサービスをしてくれない▽解約したのにお金が返ってこない――といったものです。

国民生活センターのアドバイス

  • 自分の希望をしっかりと伝え、サービス内容や料金等をよく確認しましょう
  • 預託金等の用途や解約時の返金に関する条件について予め確認しておきましょう
  • 契約内容を周囲の人にも理解してもらうよう心がけましょう
  • 契約や解約に際しトラブルになった場合にはすぐに最寄りの消費生活センター等に相談しましょう

こうした事業者を直接規制する法律は整備されていません。民法には、「契約の締結及び内容の自由」を定めていますが、この自由の下に、専門的な知識が乏しい利用者に理不尽な契約を強いてくる事業者もいるのです。

また、資産が乏しいため、こうした身元保証事業者の利用が難しい人もおられます。

身元保証以外の選択肢がある

施設側が求める「困ったときの対応」のほとんどは、身元保証人がいなくても可能です。

選択肢としては、成年後見制度や、生前委任・死後事務委任などの契約があります。利用料の支払い、緊急時対応、財産管理、亡くなった後の片づけなどはこうした制度や契約で対応できます。

後見人は、家庭裁判所などの監督を受けますので、安心して利用することができるでしょう。後見人を立てていれば、身元保証は不要という施設も増えています。