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日常生活自立支援事業と成年後見制度はどう違いますか
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判断力が衰えた高齢者を支える制度として成年後見が知られています。これと似た制度に社会福祉協議会が実施する「日常生活自立支援事業」(以下、自立支援事業)があります。わかりやすく言うと、この事業は「成年後見ライト」といった性格をもっています。後見人が、財産や生活に大きな変化をもたらす重い判断も行うのに対して、日常的で頻度の高い行為をサポートします。両者を比較すると以下の表のようになります。
日常生活自立支援事業 成年後見制度(法定後見) 判断力 判断力の低下が軽度(本人で契約できる程度) 判断力が不十分、著しく低下 範囲 日常的な法律行為・事実行為 財産管理や身上保護全般 重要な法律行為を含む 代理権* 福祉サービスの利用手続き 医療費、税金などの支払い手続き 預貯金の払戻し、解約など (契約書で定める) 左記に加え、介護施設への入居契約、入院契約、遺産分割など (保佐・補助類型では家庭裁判所が認めた行為に限定) 援助する人 社会福祉協議会の職員、専門員、生活支援員 成年後見人、保佐人、補助人 申し込み 市町村の社会福祉協議会に申込み 家庭裁判所に申立て 費用 1時間1200円 月2万円から6万円 (家庭裁判所が決定) 監督機関 県社会福祉協議会、県運営適正化委員会 家庭裁判所、後見監督人 *代理権とは、本人に代わって意思表示をして契約などの行為をおこない、本人に権利や義務を発生させる権限です
どちらを選ぶこともでき、併用も可能
本人の判断力によって、両制度の対象者を分けられるわけではありません。
自立支援事業を利用できるのは、契約の内容を理解できる能力と利用意思がある人です。
成年後見制度では、判断力の衰え方が大きい順に、上から①後見②保佐③補助の3つの類型がありますが、「支援を受ければ契約の内容を理解できる人」は保佐・補助に類当たります。
したがって、本人で契約できる程度の判断力があれば、自立支援事業と、成年後見制度の保佐・補助類型のどちらでも利用できます。
自立支援事業を選んで利用していた人の判断能力が著しく低下した場合は、成年後見制度の後見類型に移行するため、家庭裁判所に申立てを行います。
なお、自立支援事業と成年後見制度は併用できます。ただし、自立支援事業が「本人の利益のため必要不可欠な場合」に限られます。その場合、成年後見人と間で契約を交わすことが可能です。
サポートの範囲が違う
自立支援事業のサポートは、利用者が地域で自立した生活を継続するために必要な行為に限定されています。具体的には、福祉サービスに関する契約、預貯金の出し入れ・解約、医療費や社会保険料などの支払い、年金・福祉手当の受け取り、行政手続きのサポート、定期的な訪問による生活の変化をキャッチ、預貯金通帳・実印などの保管があります。
成年後見制度では、自立支援事業で行う業務のほかに、介護施設への入所、病院への入院、自宅の増改築などに関する契約、相続人になったときの遺産分割協議への参加、相続放棄などもできます。また、本人介護施設に入居するときは、家庭裁判所の許可を得ながら、自宅の売却、賃貸借の解約ができます。
なお、手術の同意、延命措置に関する判断などは、自立支援事業でも成年後見制度でもできません。
1200円と2万円
自立支援事業と成年後見制度では、料金が大きく異なります。自立支援事業では、1時間1200円程度で利用できます。月1回、1時間利用という方も多いです。これに対して、士業者らを後見人につけると、報酬として毎月、2万円から6万円のお金がかかります。
自立支援事業では、市町村によっては減免制度があります。生活保護受給者の場合は、公費負担になりますので本人が費用を払う必要はありません。成年後見制度でも、低所得者に対して、申立て費用や後見人報酬を助成する制度があります。
手続きは難しい?
自立支援事業のサービスを受けるには、社会福祉協議会に相談して契約します。申込む時には費用はかかりません。成年後見制度では、家庭裁判所に後見開始を申し立てます。この際、医師の診断書や各種証明書の提出が必要になり、申立てと登記手数料として3,400円がかかります。
関連条文
社会福祉法
▽社会福祉法第2条
3項の十二号 福祉サービス利用援助事業(精神上の理由により日常生活を営むのに支障がある者に対して、無料又は低額な料金で、福祉サービス(前項各号及び前各号の事業において提供されるものに限る。以下この号において同じ。)の利用に関し相談に応じ、及び助言を行い、並びに福祉サービスの提供を受けるために必要な手続又は福祉サービスの利用に要する費用の支払に関する便宜を供与することその他の福祉サービスの適切な利用のための一連の援助を一体的に行う事業をいう。)