遺言執行者は、遺言者の意思を受け継ぎ、遺言の内容を実現するため、一切の行為をする権利義務がある人です。
遺言執行者は必要?
しかし、遺言書があっても遺言執行者は絶対に必要というわけではありません。必要になるのは、遺言で廃除や認知を行う場合であって、それ以外では、いても、いなくてもよいのです。ですが、遺言執行者がいた方が、相続手続きは各段にスムーズになります。
遺言執行者は、単独で、遺言通りに相続財産を分配する権限をもちます。相続人の数が多いときは、関係の良し悪しにかかわらず全員の署名捺印をそろえるのは大変ですが、それが要らなくなります。
遺言執行者の選び方
相続人か、士業者などが遺言執行者になります。誰を選任するかは遺言書で指定することが一般的ですが、指定されていないときは家庭裁判所が選任することができます。相続人や受遺者などが、遺言者の最後の住所地の家庭裁判所に申立てます。遺言執行者には、一人だけではなく、数人を選任することも可能です。
遺言執行者に選ばれたら
遺言執行者に就任することを承諾する場合は、相続人全員に通知しなければなりません。そして、被相続人の財産目録を作成して、相続人全員に交付しなければなりません。遺言執行者は、不動産の相続登記、預金の名義変更などを行います。
単独で相続手続きができるわけですから、遺言執行者を除いて遺産分割協議を行うと無効になります。相続人全員が同意すると遺言と異なる遺産分割ができますが、これには遺言執行者の同意が必要です。
関連条文
▽民法1006条
遺言者は、遺言で、一人又は数人の遺言執行者を指定し、又はその指定を第三者に委託することができる。
2 遺言執行者の指定の委託を受けた者は、遅滞なく、その指定をして、これを相続人に通知しなければならない。
▽民法1007条
遺言執行者が就職を承諾したときは、直ちにその任務を行わなければならない。
2 遺言執行者は、その任務を開始したときは、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知しなければならない。
▽民法1010条
遺言執行者がないとき、又はなくなったときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求によって、これを選任することができる。
▽民法1011条
遺言執行者は、遅滞なく、相続財産の目録を作成して、相続人に交付しなければならない。
▽民法1012条
遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。
2 遺言執行者がある場合には、遺贈の履行は、遺言執行者のみが行うことができる。