特定の遺産を、特定の人に相続させる趣旨の遺言を特定財産承継遺言といいます。

遺言で遺産分割の方法を指定する際、

  • 財産をどんな形で分けるか
  • どの財産を誰に帰属させるか

を記しますが、②のが特定財産承継遺言です。

①では、現物分割、換価分割、代償分割などを指定します。例えば、「不動産を売却し、代金を〇〇と〇〇で分けよ」といった遺言になります。「甲土地は〇〇に相続させる」は②になります。

特定財産承継遺言

特定財産承継遺言では、遺産分割協議なしで、相続開始時に特定の財産が特定の相続人(受益相続人)に帰属します。受益相続人は、相続した不動産の所有権移転登記手続を単独ですることができます。

相続分を算定するときは、特定財産承継遺言による承継財産は、遺贈による受益と同様に、特別受益として扱われます。

遺産分割の対象になるのは、この承継財産(特別受益)を遺産に加えたものです。受益相続人は、特別受益を差し引いた分の財産のみ取得します。しかし、「持戻し免除」という制度があって、承継財産を遺産に持戻さない(含めない)意思表示を遺言者がしている場合、遺産に含めません。ただし、遺留分の計算では持戻し免除が認められません。

関連条文
民法903条2項
遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者又は受贈者は、その相続分を受けることができない。
民法903条3項
被相続人が前二項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思に従う。
民法1014条2項
遺産の分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言(以下「特定財産承継遺言」という。)があったときは、遺言執行者は(中略)対抗要件を備えるために必要な行為をすることができる。
民法1046条1項
遺留分権利者及びその承継人は、受遺者(特定財産承継遺言により財産を承継し又は相続分の指定を受けた相続人を含む。以下この章において同じ。)又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる。

民法

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