農地を、別の農家に売却しようと思っています。どのような手続きをしたらいいですか

他の用途に転用するのではなく、農地の用途のまま売却する際は、市町村の農業委員会から所有権移転についての許可をもらわなければなりません。農地法第3条に規定があるため、「3条許可」と呼ばれています。この許可を受けていない売買などは無効です。登記手続きには、農業委員会から交付される許可書を使用します。3条許可は、賃借権の設定においても義務付けられています。

所有権移転でも許可が不要なケース

相続において、農地の所有権が相続人に移るときは許可が要りません。届出のみ求められます。相続人以外への特定遺贈は許可が必要です。

不許可になるのはどんな場合?

不許可になる例としては以下のようなものがあります。

  • 農作業にあたる世帯員、機械の数、技術が不足している(すべて効率要件)
  • 原則年間150日以上、農業に従事できない(農作業常時従事要件)
  • 周辺農地との調和を乱す(地域との調和要件)
    無農薬地域で有農薬農業を行う、水利調整に参加しないなど
  • 取得してすぐに転用・転売する計画がある(耕作要件)
  • 農地所有適格法人ではない(農地所有適格法人要件)

橿原市農業委員会の申請書の一部。ダウンロードはこちら

3条許可の申請方法

 売る人(譲渡人)と買う人(譲受人)双方が申請書に署名し、農地のある市町村農業委員会に申請します。申請締め切り日は農業委員会によって異なります。毎月25日であるところが多いようです。申請締切日から許可書交付までの標準処理期間は4週間ですが、農水省はさらなる短縮を促しており、10日ほどで許可が出るところもあるようです。

3条許可の必要書類

(奈良県橿原市の場合、市町村によって異なります)

  • 登記事項証明書
  • 住民票
    譲渡人…本人のみの抄本
    譲受人…世帯員全員及び続柄記載のある謄本
  • 転用・転売しない誓約書(自己様式)
    市内・市外耕作者2年(だたし市街化区域内農地は除く)
  • 位置図
  • 調査表
    地区担当の農地利用最適化推進委員の確認印が必要
  • 抵当権が設定されている場合は同意書
  • 代理人が提出する場合は委任状

市外耕作者の場合は、これに加え、耕作証明書(住所地農業委員会)、居住地より申請地までの地図(所用時間・距離等)が必要です。

関連条文
農地法3条第1項
農地又は採草放牧地について所有権を移転し、又は地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権若しくはその他の使用及び収益を目的とする権利を設定し、若しくは移転する場合には、政令で定めるところにより、当事者が農業委員会の許可を受けなければならない。(以下略)
農地法3条第2項
前項の許可は、次の各号のいずれかに該当する場合には、することができない(略)
 所有権、地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権若しくはその他の使用及び収益を目的とする権利を取得しようとする者又はその世帯員等の耕作又は養畜の事業に必要な機械の所有の状況、農作業に従事する者の数等からみて、これらの者がその取得後において耕作又は養畜の事業に供すべき農地及び採草放牧地の全てを効率的に利用して耕作又は養畜の事業を行うと認められない場合
 農地所有適格法人以外の法人が前号に掲げる権利を取得しようとする場合
 信託の引受けにより第一号に掲げる権利が取得される場合
 第一号に掲げる権利を取得しようとする者(農地所有適格法人を除く。)又はその世帯員等がその取得後において行う耕作又は養畜の事業に必要な農作業に常時従事すると認められない場合
 農地又は採草放牧地につき所有権以外の権原に基づいて耕作又は養畜の事業を行う者がその土地を貸し付け、又は質入れしようとする場合(略)
 第一号に掲げる権利を取得しようとする者又はその世帯員等がその取得後において行う耕作又は養畜の事業の内容並びにその農地又は採草放牧地の位置及び規模からみて、農地の集団化、農作業の効率化その他周辺の地域における農地又は採草放牧地の農業上の効率的かつ総合的な利用の確保に支障を生ずるおそれがあると認められる場合

農地法

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