農家住宅を建てられる「農業を営む者」とはどんな人ですか

農家判定制度でチェック

「農業を営む者が居住用に供する建築物」つまり「農家住宅」は、市街化調整区域でも開発許可なしで建てることができます。とはいっても、15㎡の貸農園で、自分たちが食べる野菜を育てているだけでは農家住宅は建てられません。要件を満たしているかどうかは、県の「農家判定制度」でチェックされます。農家判定書は、農地転用の際、建築確認申請の際に必要になってきます。(本稿は奈良県内の場合です)

農家判定を受ける手順は?

 市町村の農業委員会で、農地基本台帳(農家台帳)に登載されていることの証明を受けた後に、農家住宅を建築する土地を所管する県土木事務所に書類を提出して判定を受けます。農業委員会は証明を出す際に現地調査して、耕作状況を調べます。

農業委員会で農家証明 ➡ 土木事務所で農家判定

奈良県の農家判定書
奈良県の農家判定書書式

「農業を営む者」の要件は?

奈良県内では、以下のような要件に当てはまる人は「農業を営む者」と判断されます。

  • 現在、農業をしていて、将来も農業を続ける意思があり、農家台帳に登載されている
  • 10アール(1反、300坪)以上の農地を耕作している

「農業を営む者」は、自分で農業を営む人(兼業可)であって、名義貸しは許されません。「農業を営む者」には自作農に限らず、所有権以外の権原に基づいて耕作を行う小作農も含まれます。農業経営基盤強化促進法に基づいて農地に利用権を設定し、農家台帳に登載されている場合もOKです。小作農は、小作地の権利取得後に1年以上、耕作していなければなりません。新規就農の場合、農家台帳登載から2年経たないと証明をださない自治体もあります。

「1反の耕作」が分かれ目です。300坪というのは、かなりの面積です。

農地所有適格法人の構成員である場合は、
・年間60日以上、農作業をしている
・法人に10アール以上の農地の所有権や使用収益権を移転するなどして農作業をしている
のいずれかに該当する必要があります。

農家住宅を建てる合理的理由が必要

農家住宅の建て方にも要件があります。

  • 今、住んでいる住居の状況に照らして農家住宅を必要とする合理的な理由がある
  • 農家住宅を建てる土地が、原則として農地と同じ市町村内
  • 農業を営む者か世帯構成員が原則として土地を所有している

世帯構成員とは、農業を営む者と同じ家に住んで、生計を一にする親族のことです。
農家住宅を必要とする合理的理由とされるのは、現在住んでいる家が、借家である、手狭になった、古くなった、世帯構成員が結婚したといったものです。
土地の場所については、同じ市町村内であることが原則ですが、市町村の境あたりにある場合は、隣の市町村であっても認められます。
農家判定の申請時に、農業を営む者か世帯構成員が土地を所有していることが登記事項証明書で確認できなければなりません。ただし、借地権を設定しているか、定期借地権契約を締結している場合は、所有していなくてもかまいません。

農家住宅の転売・賃貸は基本的に不可

農家住宅は、継続的に農業を営むための保障として認められるものですで、自分の生活の本拠でなければなりません。したがって、農家住宅を第三者に転売、賃貸することはできません。しかし、長期間、「農業を営む人」が住んだ後、やむを得ない理由があるときは、一般住宅への用途変更が認められることがあります。

農家判定で必要な書類は?

農業委員会、土木事務所には下記の書類を提出します。

▽必要書類

  • 農家判定書
    申請者は「農業を営む者」です。市街化調整区域の耕作地すべてを記載します。敷地面積欄には実測面積を記載します。
  • 誓約書
    建築するのが農家住宅であることを誓約します。
  • 印鑑証明書(交付後3か月以内)
  • 付近見取図
    縮尺1/2500の都市計画地図に農家住宅を建築する土地や、耕作している農地の位置などを記入します。
  • 建物の配置図
    縮尺1/100程度。建物の配置、接道の状況などを記入。断面図も添えます。
  • 建物の平面図
    縮尺1/100程度。間取りなどを記入します
  • 住民票(交付後3カ月以内)
    世帯構成員全員のもの
  • 公図(交付後3カ月以内)
  • 土地の登記事項証明書(交付後3カ月以内)

農家判定書に有効期限はありません。何年前のものであっても農地転用や建築確認申請に使えます。しかし、あまり以前のものであると、法改正があったり、書式が変わっていたりすることがありますので注意しましょう。

奈良県以外では、「農家判定書」は、「開発行為等適合証明申請書」「六十条証明」といった言い方もします。

関連条文
▽都市計画法第29条
都市計画区域又は準都市計画区域内において開発行為をしようとする者は、あらかじめ、国土交通省令で定めるところにより、都道府県知事(中略)の許可を受けなければならない。ただし、次に掲げる開発行為については、この限りでない。
一(略)
二 市街化調整区域、区域区分が定められていない都市計画区域又は準都市計画区域内において行う開発行為で、農業、林業若しくは漁業の用に供する政令で定める建築物又はこれらの業務を営む者の居住の用に供する建築物の建築の用に供する目的で行うもの
2 都市計画区域及び準都市計画区域外の区域内において、それにより一定の市街地を形成すると見込まれる規模として政令で定める規模以上の開発行為をしようとする者は、あらかじめ、国土交通省令で定めるところにより、都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし、次に掲げる開発行為については、この限りでない。
一 農業、林業若しくは漁業の用に供する政令で定める建築物又はこれらの業務を営む者の居住の用に供する建築物の建築の用に供する目的で行う開発行為

都市計画法