事業を継がない相続人に無議決権株式を
株主総会ですべての事項について議決権を行使できない株式です。無議決権株式を発行することによって経営に口出しする株主を少なくすることができます。
この株式は、相続において効力を発揮します。事業継承で心配なことのひとつは、船頭が多くなりすぎること。後継者がうまく事業を切り盛りしていたのに、株式を相続した別の子が口出しを始めて経営がうまくいかなくなる事態も想定されます。後継者以外の相続人に無議決権株式を、後継者には普通株式を相続させると、この事態を回避できます。配当について有利な「配当優先の無議決権株式」なら、後継者ではない相続人の不満が出にくくなるでしょう。
発行にあたっては、株主総会で決議し、定款を変更し登記しなければなりません。
株式の相続税評価額はどうなる
相続税課税においては、無議決権株式の評価額を5%減らすこと、減らした額を同族株主が取得した普通株式の評価額に加算することが可能です。これには、相続税の申告期限までに遺産分割協議を終え、届出書を税務署長に提出することなどが条件になります。無議決権株式を従業員持株会に渡すことで相続財産を圧縮して節税することもできます。
意外に高い非上場株式
非上場会社の株式は意外に高く、相続財産の大半が株式というケースもあります。民法改正で、相続開始の10年より前にした特別受益にあたる贈与は、遺留分算定の基礎財産に含まれないことになりました。したがって、後継者が決まっているときは、早めに株式を贈与するという手もあります。また、無議決権株式を生前贈与で後継者でない人に渡しておくこともできます。
いずれにせよ、紛争が起こらないよう、それぞれの相続人に配慮した遺言書を書いておくべきでしょう。
関連条文
会社法
▽会社法108条
株式会社は、次に掲げる事項について異なる定めをした内容の異なる二以上の種類の株式を発行することができる。(以下略)
一 剰余金の配当
二 残余財産の分配
三 株主総会において議決権を行使することができる事項
四 譲渡による当該種類の株式の取得について当該株式会社の承認を要すること。
(以下略)