相続した土地の使い道がなく、買い手や借り手も見つからず、お荷物になっていませんか。令和5年4月27日から、こうした土地について一定の条件の下、負担金を納めれば国が引き取ってくれる制度がスタートします。相続土地国庫帰属制度といいます。贈与や売買によって取得した土地は対象外です。建物の相続にも適用されません。
引き取ってくれない土地がある
宅地だけでなく、農地や森林も国庫帰属制度の対象になります。しかし、どんな土地でも引き取ってもらえるわけではありません。
- 建物がある土地
- 担保権が設定されている土地
- 土壌汚染のある土地
- 境界がはっきりしない土地
などは、そもそも申請ができません。
相続で土地を相続した場合は、上に家が建っていることが多く、その場合、家を解体しないと引き取ってもらえないことになります。また、
- 勾配が30度以上、高さが5メートル以上の崖がある土地
- 防災措置が必要な土地
- 墓地、境内、通路など他人による使用が予定されている土地
- 地上や地下に工作物がある土地
- 野生動物が周辺の農作物などに被害を生じさせる土地
など、管理や処分に費用や労力がかかり過ぎる土地は承認されません。
国庫帰属の負担金はいくらなの?
申請者は10年分の標準的な管理費用を払わなくてはなりません。その額は、原則20万円です。しかし、都市計画法の市街化区域、農用地区域内の農地、森林などは別の計算式をあてはめます。広めの農地だと数百万円にもなります。
例えば、
5000平方メートル(50アール)の農用地区域内の農地の負担金は
「5,000×640円+608,000円=3,808,000円」
なんと380万円にもなります。
200平方メートルの市街区域内の宅地は、
「200×2,450円+303,000円=793,000円」
80万円といっても軽い負担ではありません。
負担金額の自動計算シートはこちら
数十年前の相続でもOK
相続土地国庫帰属制度は、「何年以内の相続」という限定をしていません。数十年前に相続した土地も引き取ってもらえます。これは重要な点です。「昔のこと過ぎて無理だろう」とあきらめないようにしましょう。
誰がどこに申請
相続によって土地を取得した人が、土地を管轄する法務局に申請します。土地の遺贈を受けた相続人も申請できます。贈与には適用されません。2,000万円の控除が受けられる配偶者への「おしどり贈与」なども対象外となります。近所の人から買った土地なども対象になりません。
共有の土地はどうなるのでしょう。共有者のうちの誰かが相続で持分を取得していれば制度を利用できます。他の共有者が売買や贈与で取得していてもかまいません。共有者全員で申請します。
手続の流れ
国庫帰属の申請
法務局担当官が書面審査・実地調査国庫帰属の申請
法務大臣による承認
30日以内に負担金を納付
国庫帰属
以上のように、要件が緩い制度ではありません。要件に当てはまらない場合は、農地バンク、森林バンク、空き家バンクなどを使って、買い手や借り手を探す方法があります。
関連条文
相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律
▽相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律2条
土地の所有者(相続等によりその土地の所有権の全部又は一部を取得した者に限る。)は、法務大臣に対し、その土地の所有権を国庫に帰属させることについての承認を申請することができる。
(2略)
3 承認申請は、その土地が次の各号のいずれかに該当するものであるときは、することができない。
一 建物の存する土地
二 担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地
三 通路その他の他人による使用が予定される土地として政令で定めるものが含まれる土地
四 土壌汚染対策法(平成十四年法律第五十三号)第二条第一項に規定する特定有害物質(法務省令で定める基準を超えるものに限る。)により汚染されている土地
五 境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲について争いがある土地
▽同5条
法務大臣は、承認申請に係る土地が次の各号のいずれにも該当しないと認めるときは、その土地の所有権の国庫への帰属についての承認をしなければならない。
一 崖(勾配、高さその他の事項について政令で定める基準に該当するものに限る。)がある土地のうち、その通常の管理に当たり過分の費用又は労力を要するもの
二 土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物、車両又は樹木その他の有体物が地上に存する土地
三 除去しなければ土地の通常の管理又は処分をすることができない有体物が地下に存する土地
四 隣接する土地の所有者その他の者との争訟によらなければ通常の管理又は処分をすることができない土地として政令で定めるもの
五 前各号に掲げる土地のほか、通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地として政令で定めるもの