遺留分は、相続人の権利として民法で定められている最低限の取り分です。遺言で相続分を指定したり、遺贈したりするのは遺言者の自由であるとはいえ、あまりに偏った財産配分になると、相続人が生活に困ることも心配されます。そういうことのないよう、兄弟姉妹を除く相続人には遺留分の権利が認められています。
権利者全体に保障される遺留分(総体的遺留分)は、財産の2分の1であることが大半です。直系尊属(父母等)のみが相続人の場合は3分の1です。総体的遺留分を法定相続分で割ると、各相続人の遺留分になります。相続人が「配偶者と子ども」のときは、財産全体の2分の1が遺留分になり、配偶者は全体の4分の1、子供は(4分の1÷人数分)を取得する権利があります。
遺留分を算定する基礎となる財産(基礎財産)は次のように求めます。
(遺贈を含む相続開始時の財産)+(生前贈与)-(債務)
生前贈与といっても、すべての生前贈与が基礎財産に含まれるわけではなく、基準があります。
①相続人への生前贈与
- 相続開始前10年間にした特別受益にあたる贈与
- 遺留分権利者に損害を与えることを知った上で行う、相続開始の10年前の日より前の贈与
②相続人以外への生前贈与
- 相続開始前1年間に行った贈与
- 遺留分権利者に損害を与えることを知った上で行う、相続開始の1年前の日より前の贈与
2018年の相続法改正までは、特別受益にあたる贈与は、何十年も前のものであっても基礎財産に含まれていました。改正後は10年間に限定されています。贈与者と受贈者が遺留分権利者に損害を与えることを意図しない限り、10年より前にした贈与は遺留分算定の基礎財産から除外されます。
遺留分侵害額請求
遺留分を侵害されたと考える相続人は、受遺者や受贈者に対して、遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求することができます。この権利は、相続開始と遺留分侵害を知った日から1年以内に行使します。請求は、最初に受遺者に対して行い、それだけで遺留分を回復できない場合は、受贈者に対して行います。すぐに支払いできない受遺者、受贈者に対して支払いを相当期間猶予するしくみもあります。
関連条文
▽民法1043条
遺留分を算定するための財産の価額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除した額とする。
▽民法1044条
贈与は、相続開始前の一年間にしたものに限り、前条の規定によりその価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、一年前の日より前にしたものについても、同様とする。
2 (略)
3 相続人に対する贈与についての第一項の規定の適用については、同項中「一年」とあるのは「十年」と、「価額」とあるのは「価額(婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与の価額に限る。)」とする。