遺言書で義務を負わせて財産を贈ることを負担付遺贈といいます。相続人に対しても、相続人ではない人に対してもできます。特定財産について「相続させる」旨を書く特定財産承継遺言にも、負担付遺贈の規定が適用されます。

どんな義務を負うのか

財産の贈るかわりに負わせる義務としては

  • 親の扶養、介護
  • 親の施設入所費用の負担
  • 住宅ローンの返済
  • 葬儀費用の支出
  • ペットの飼育
  • 墓地の管理

などがあります

遺贈を受けた人(受遺者)は、こうした義務を履行する責任を、遺贈を受けた財産の範囲内で負います。相続人からの遺留分侵害額請求などによって取得分が減ると、減った割合に応じて責任をまぬがれます。

義務を負いたくなければ遺贈放棄

遺贈というのは、遺言書でする一方的な行為です。遺言を見るまで遺贈について知らなかった人は「そんな義務は負えない」と考え、負担付遺贈を拒みたいこともあるでしょう。そんなときは、遺贈を放棄します。

特定財産についての遺贈(特定遺贈)の放棄は、家庭裁判所に申し立て(申述)する必要はありません。いつでも放棄できます。他の相続人に内容証明郵便などで通知すれば足ります。受遺者が相続人の場合、遺贈を放棄しても相続権はありますので、遺産分割協議をすることになります。

一方、「遺産の全部を遺贈する」「遺産の3分の2を遺贈する」というふうに、全部または割合で示された遺贈(包括遺贈)のときは、知った時から3か月以内に家庭裁判所に申述する必要があります。特定の財産について「相続させる」と書く特定財産承継遺言の場合は、相続放棄するか、遺言と異なる遺産分割について他の相続人と合意しなければなりません。

受遺者が遺贈を放棄すると、それによって利益を受けることになっていた人(受益者)が受遺者になることができます。

遺言書の書き方

まず、何を承継するかを書きます。例えば
「遺言者は、長男・〇〇〇〇に次の預貯金を相続させる」と書き
後の項で、「第〇項の相続の負担として」と記し、「妻と同居して扶養する」「生活費として○○に月額〇万円を支払う」「ペットが死ぬまで大切に飼う」といった条件を挙げます。

義務を履行しなかったら

義務が生じたときには遺言者はすでに他界しているため、それをいいことに受遺者が義務を履行しないこともあります。もらうだけもらって、後は知らないと。そうならないように、受遺者を監督する人(=遺言執行者)を設定しておくとよいでしょう。

受遺者が履行しない場合、相続人は相当の期間を定めて履行を求め、その期間中に履行されないときは、家庭裁判所に遺言の取消しを請求することができます。取り消しになると、遺贈した財産は相続人に帰属します。

関連条文
民法986条
受遺者は、遺言者の死亡後、いつでも、遺贈の放棄をすることができる。
民法1002条
負担付遺贈を受けた者は、遺贈の目的の価額を超えない限度においてのみ、負担した義務を履行する責任を負う。
2 受遺者が遺贈の放棄をしたときは、負担の利益を受けるべき者は、自ら受遺者となることができる。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
民法1003条
負担付遺贈の目的の価額が相続の限定承認又は遺留分回復の訴えによって減少したときは、受遺者は、その減少の割合に応じて、その負担した義務を免れる。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
民法1027条
負担付遺贈を受けた者がその負担した義務を履行しないときは、相続人は、相当の期間を定めてその履行の催告をすることができる。この場合において、その期間内に履行がないときは、その負担付遺贈に係る遺言の取消しを家庭裁判所に請求することができる。

民法

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