相続税、贈与税一体改革の方向性がいよいよ見えてきました。11月8日の政府税制調査会の総会で報告された専門家会合の提言を点検していきます。今回は、教育、結婚、子育てに関する非課税措置についてです。どうやら廃止の方向になっているようです。

教育、結婚、子育て贈与の非課税は廃止?のイメージ写真

3つ贈与税非課税制度

贈与税に関してリーマンショック後に、経済対策として導入された非課税制度が3つあります。

①「教育資金の一括贈与に係る非課税措置」1,500万円非課税

親や祖父母が、子や孫名義の専用口座 に教育資金を一括して振り込んだ場合には、1,500万円まで非課税となります。子や孫は0歳から29歳で、所得金額が1,000万円以下であることが条件です。贈与されたお金の使途は、入学金、授業料、塾、習い事などで金融機関が領主書などをチェックします。親や祖父母がなくなったときに残ったお金は、相続財産に加算されます。

②「結婚・子育て資金の一括贈与に係る非課税措置」1,000万円非課税

親や祖父母が、金融機関の子や孫名義の専用口座に結婚・子育て資金を一括して振り込んだ場合には、1,000万円まで非課税となります。子や孫は18歳から49歳で、所得金額が1,000万円以下であることが条件です。使途は、挙式費用、新居の住宅費、不妊治療費、出産費用、子の医療費・保育費などです。

③「住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税措置」1,000万円非課税

親や祖父母から、住宅の取得資金の贈与を受けた場合は、最大1,000万円まで非課税となります。要件としては、子や孫は18歳以上で所得金額が2,000万円以下、住宅は床面積が50㎡以上240㎡以下(所得金額が1,000万円以下なら下限は40㎡以上です)などです。1,000万円は、耐震、省エネ、バリアフリーの面で一定の水準に達している住宅で、それ以外は非課税限度額は500万円です。

廃止の方向で検討

専門家会合では、これらの制度について「相続時精算課税制度の使い勝手の向上と併せて、廃止する方向で検討することが適当ではないか」との見解です。

理由としては、

  • 富裕層の資産の移転になんの税負担も求めない制度で、世代を超えた格差固定につながりかねない
  • 制度創設のころと比べると利用件数が大幅に減少している
  • 教育、結婚、子育てについては、近年、公費でカバーされる部分が増加している

利用激減4,712件➡153件

では、実際にどのくらい、利用件数が減っているのでしょうか。「教育資金」については、信託協会公表の実績によると、平成25年度に67,581件の新規契約がありましたが、令和3年度には8,962件まで減少しています。「結婚・子育て」については平成27年に新規契約が4,712件ありましが、令和3年度は153件です。これに対して「住宅取得等資金」は、国税庁資料によると、ほぼ横ばいで推移し、令和3年にも7万件の利用がありました。

実態は親の資産形成資金

利用件数の減少以外の問題として、「教育資金」については、祖父母や曾祖父母からの贈与が大半で、実態としては、子や孫などに対する財産移転というより、負担が減った親の資産形成に使われるという側面が強いことが問題視されていました。

さて、与党税調の判断は?

今回の提言については、年末にかけて令和5年度の税制大綱の取りまとめる与党税制調査会でも検討される見通しです。

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