成年後見制度の「扇のかなめ」
成年後見制度を利用しやすくするために、地域に設けられた「扇のかなめ」のような組織が中核機関です。後見制度の相談窓口になるとともに、福祉、医療、法律など様々な専門職や地域の人たちをつなぐ役割があります。
「中核機関」は「成年後見制度利用促進基本計画」(平成29年3月24日閣議決定)に盛り込まれました。そこでは、「専門職による専門的助言等の支援の確保や、協議会等の事務局など、 地域連携ネットワークのコーディネートを担う中核的な機関」と位置付けられています。
中核機関の役割
①成年後見制度についての広報
②成年後見に関する相談窓口の設置
③成年後見制度の利用促進
④成年後見人らを支援
「チームでの支援」盛り立て
この基本計画は、成年後見制度を必要としている人が、どの地域でも制度を利用できるようにすることを目標としていて、
- 相談窓口を整備する
- 親族、福祉、医療、地域の人、後見人がチームとなって本人を見守れるようにする
- チームが福祉・法律の専門職から助言を受けられるようにする
- 専門職団体や関係機関が連携を強化するための協議会を設立する
ことなどに取り組むことをうたっています。司令塔となって、こうした施策をリードしていくのが中核機関です。専門職らの協議会を運営し、チームで本人を支援する体制を作ります。このほか、後見申立ての支援をしたり、市民後見人を育成したりしています。
中核機関の特徴として、「本人を支える」だけでなく「支える人を支える」ことにも力を入れている点があります。チームのメンバー同士で支え合うとともに、法律専門職らの支援を受けやすくします。
中核機関の具体的な取り組みとしては以下のようなことが行われています。
広報 | パンフレットの配布、市民向け研修開催 |
相談窓口 | 施設への出張相談、専門職による相談会、ケース会議への出席 |
利用促進 | 協議会の運営、本人支援方針の検討会議開催、後見申立人・後見人候補者の調整、書類収集、市民後見人の育成 |
後見人らを支援 | 後見人らの相談対応、事例検討会・研修の開催、後見人の交代調整 |
中核機関は必ずしも新しい組織を作る必要はありません。こうした業務が行えるようになればいいわけで、すでに、似たような組織がある場合は、それらに中核機関の役割を担わせることもできます。機能を分散させてもかまいません。
包括センターとの違いは?
介護、医療、福祉について、同様に「扇のかなめ」となっている総合相談窓口として、地域包括支援センターがあります。成年後見制度でも重要な役割をしていて、支援者の相談を受けて、首長申立てにつなぐといった仕事をしています。すでに中核機関の役割の一部を担っているわけです。
成年後見制度への対応を軸にする中核機関は、「後見包括センター」といったイメージです。申立て支援のほかに、上記のような後見制度を利用しやすくするための幅広い施策を行っていきます。
中核機関、6割の自治体で整備済み
厚生労働省が、全国の自治体(1741市区町村)を対象に行った調査では、令和5年4月1日現在、中核機関が整備されているのは61.5%(1070市区町村)でした。「第二期成年後見制度利用促進基本計画」(令和4年3月25日閣議決定)では、令和6年度末までに全地域で中核機関を設けることを目指していますが、調査結果では、令和6年度までに整備が予定されているのは、73.1%にとどまりました。
中核機関の運営主体は、自治体直営が25.9%、直営・一部委託等が18%、委託が56.1%となっています。委託先は、社会福祉協議会が最も多く、そのほかには、NPO法人、一般社団法人、社会福祉法人などがあります。
関連条文
成年後見制度の利用の促進に関する法律
▽成年後見制度の利用の促進に関する法律第1条
この法律は、認知症、知的障害その他の精神上の障害があることにより財産の管理又は日常生活等に支障がある者を社会全体で支え合うことが、高齢社会における喫緊の課題であり、かつ、共生社会の実現に資すること及び成年後見制度がこれらの者を支える重要な手段であるにもかかわらず十分に利用されていないことに鑑み、成年後見制度の利用の促進について、その基本理念を定め、国の責務等を明らかにし、及び基本方針その他の基本となる事項を定めること等により、成年後見制度の利用の促進に関する施策を総合的かつ計画的に推進することを目的とする。