公証人とは、どんな人たちで、どんな仕事をしているのですか

私たちが他の人とかかわりながら社会生活を営んでいく上で、権利や義務について「信頼できる証文」が欠かせません。元裁判官や元検察官などから選任される公証人は、法律的なことに詳しく、中立的な立場で法律的に不備のない「信頼できる証文」を作ってくれます。これを公正証書といいます。公正証書にすることによって、私的なものが公的なものになります。

公正証書を作成

公証人が作成する公正証書には、例えば以下のようなものがあります。

  • 不動産売買契約書
  • 賃貸借契約書
  • 遺言書
  • 任意後見契約書
  • 家族信託契約書
  • 離婚契約書

公正証書の作成以外では、文書が本人の意思で作られたことを証明する「認証」、その日に文書があったことを証明する「確定日付の付与」も公証人の仕事です。

公証人は実質的公務員です

公証人は,国家公務員法上の公務員ではありませんが、公証人法の規定により,法務大臣の任免を受け,公証という国の公務を行うので、実質的公務員(刑法の文書偽造罪等や国家賠償法の規定にいう「公務員」)と言われています。公証人は、法務大臣や所属する法務局長・地方法務局長の監督に服します(公証人法第74条)。公証人には職務専念義務があり、兼職は禁止されています(同法第5条)。

公証人は全国に500人、奈良県には3人

令和4年12 月1日現在、公証人は全国で506人です。定員は678人なので172人の定員割れ状態です。前職別では、裁判官が138人,検事が205人,法務事務官等が163人。裁判官と検事で68%を占めます。年齢別では、60歳以下が58人、61歳から65歳が271人、66歳以上が177人。

奈良県内の公証人は3人います。奈良市大宮町3の奈良合同公証役場に2人、大和高田市大中の高田公証役場に1人です。

県の規模が近い滋賀県は4人、和歌山県は7人。大阪府では30人おり、難波や上六の公証役場だけでも各3人います。公証人一人当たりの人口は奈良県が44万人、滋賀県が35万人、和歌山県が13万人、大阪府は29万人です。

公証人のエリア管轄は

奈良県に居住する人が他府県の公証役場で公正証書を作成することは可能です。ただし、法人設立のための定款認証は、法人の本店所在地を管轄する法務局の公証人でなければできません。また、奈良県内にある公証役場の公証人は、奈良県外に出張することができません。

公証人選考申込願書の一部

公証人法第13条ノ2の公証人公募願書

公証人の公募とは?

2002年から公募制が導入されました。①裁判官、検察官又は弁護士の資格を有する者②多年法務に携わった経験を有する者――に応募資格があります。

②は具体的には▽裁判所事務官、裁判所書記官、法務事務官又は検察事務官としてその職務に従事した期間が通算して15年以上で職務級が一定以上の者▽司法書士としての実務の経験年数が通算して15年以上の者▽法人の法務に関する実務の経験年数が通算して15年以上の者--などが対象になります。

①は年3回公募が行われ、応募者に対して面接が実施されます。

②は年1回の公募で、応募者に対しては、法務省で口述試験があり、「検察官・公証人特別任用等審査会」が審査します。また、応募者がその定数の倍数を超える場合は短答式による筆記試験(民法、商法、民事訴訟法、公証人法)が、公募した法務局や地方法務局で行われます。

令和5年度の公募による採用予定人員は18人です。

元検事や元裁判官は、応募すると大半が採用されます。一方、民間出身者は多くありません。2002年度から2016年度では、民間出身者の応募は、司法書士が38人、企業法務従事者等が4人いましたが、採用されたのは司法書士4人だけでした。

公証人の収入はどのくらい?

公証人は国から給料をもらうわけではありません。国が定めた手数料収入で役場を運営しており、「手数料制の公務員」といわれています。

平成29年5月23日の参議院法務委員会質疑によると、大阪法務局所属の公証人の平均収入は月340万円、東京法務局所属の公証人は月320万円です。

関連条文
公証人手数料令第9条
法律行為に係る証書の作成についての手数料の額は、この政令に特別の定めがある場合を除き、別表の中欄に掲げる法律行為の目的の価額の区分に応じ、同表の下欄に定めるとおりとする。
別表

公証人手数料令