令和6年4月の相続登記の義務化を前に、法務局の登記官が取り組んでいるのが、長い間、相続登記が行われていない土地について、法定相続人を捜す作業です。これを「長期相続登記等未了土地解消作業」といいます。法定相続人が判明すれば、関係図(法定相続人情報)を作成し、法務局が選んだ代表者に通知書を送って登記を促しています。

法定相続人の探索は、平成30年11月に一部が施行された「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」に基づく作業です。

法務局は、法定相続人に登記を促す通知書を送るほか、土地の登記に「長期相続登記等未了土地」であることを付記します。共有者が多い場合などは、延々と付記が続きます。付記には、法定相続人の名前は記載されません。

法定相続人情報ってなに?

法定相続人情報は、相続手続きに使う法定相続情報一覧図に似たものです。登記官が戸籍をみて作成します。作成番号と年月日、名義人の最後の住所、登記簿上の住所、最後の本籍、氏名などと法定相続人の住所、氏名、続柄などが記載されています。住所が記載されていることで、他の相続人への連絡がしやすくなっています。ただし、住所がわからないときは記載されていません。

相続登記が未了の土地について作成される法定相続人情報

法定相続人情報の記載例

なぜ、法務局が戸籍を見られるの?

「なんで登記官が戸籍を見られるの」という疑問がわく人もいることでしょう。戸籍を管理しているのは市町村であって、法務局ではないからです。実は、特別措置法第44条3項で、登記官が法定相続人を調べるために、市町村に戸籍謄本の提供を求めてもよいことになっているのです。法定相続人情報は、登記簿謄本を精査して作成していますので、登記申請に使うことができます。

なぜ、自分のところに通知が来るの?

もうひとつの疑問は、法定相続人はたくさんいて、自分の持分が多いわけでもないのに、なぜ、自分のところに通知書を送られてきたのかということです。これには、深い理由があるわけではありません。法務局側は「任意の1名」と説明しています。その土地の近くに住んでいるとか、親等が近いとか、名義人を一番知っていそうな人に通知書は送られます。

関連条文
所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法44条
登記官は(略)、当該土地が特定登記未了土地に該当し、かつ、当該土地につきその所有権の登記名義人の死亡後十年以上三十年以内において政令で定める期間を超えて相続登記等がされていないと認めるときは、当該土地の所有権の登記名義人となり得る者を探索した上、職権で、所有権の登記名義人の死亡後長期間にわたり相続登記等がされていない土地である旨その他当該探索の結果を確認するために必要な事項として法務省令で定めるものをその所有権の登記に付記することができる
2 登記官は、前項の規定による探索により当該土地の所有権の登記名義人となり得る者を知ったときは、その者に対し、当該土地についての相続登記等の申請を勧告することができる。この場合において、登記官は、相当でないと認めるときを除き、相続登記等を申請するために必要な情報を併せて通知するものとする。
3 登記官は、前二項の規定の施行に必要な限度で、関係地方公共団体の長その他の者に対し、第一項の土地の所有権の登記名義人に係る死亡の事実その他当該土地の所有権の登記名義人となり得る者に関する情報の提供を求めることができる
4 (略)

所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法