病気で容態が悪化し、死期が迫っているときに行う特別方式の遺言です。自分で署名や押印ができない人が対象となります。

遺言の場に3人以上の証人が立ち会い、そのうちの一人が遺言者の口授を筆記します。筆記が終わったら、遺言者と他の証人に筆記の内容を読み聞かせるか、閲覧させるかします。筆記が正確であれば、証人が署名・押印します。

死亡危急者遺言は、これだけでは効力が発生しません。家庭裁判所による確認を受けなければならないのです。証人の1人または利害関係者は、遺言の日から20日以内に家庭裁判所に請求します。家庭裁判所は「これが遺言者の真意」という心証をもたなければ、確認しません。

死亡危急者遺言のカット写真

遺言者の症状が回復して、通常の遺言ができるようになってから6か月間生存していた場合は、「死亡危急者遺言」は効力を失います。

差し迫った状況で、推定相続人などを除いた証人3人を確保しなければなりません。末期の状態での遺言能力の問題もあり、ハードルが高い遺言方式です。

関連条文
民法976条
疾病その他の事由によって死亡の危急に迫った者が遺言をしようとするときは、証人三人以上の立会いをもって、その一人に遺言の趣旨を口授して、これをすることができる。この場合においては、その口授を受けた者が、これを筆記して、遺言者及び他の証人に読み聞かせ、又は閲覧させ、各証人がその筆記の正確なことを承認した後、これに署名し、印を押さなければならない。
2 口がきけない者が前項の規定により遺言をする場合には、遺言者は、証人の前で、遺言の趣旨を通訳人の通訳により申述して、同項の口授に代えなければならない。
3 第一項後段の遺言者又は他の証人が耳が聞こえない者である場合には、遺言の趣旨の口授又は申述を受けた者は、同項後段に規定する筆記した内容を通訳人の通訳によりその遺言者又は他の証人に伝えて、同項後段の読み聞かせに代えることができる。
4 前三項の規定によりした遺言は、遺言の日から二十日以内に、証人の一人又は利害関係人から家庭裁判所に請求してその確認を得なければ、その効力を生じない。
5 家庭裁判所は、前項の遺言が遺言者の真意に出たものであるとの心証を得なければ、これを確認することができない。

民法

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